2015年09月07日

衛生学、公衆衛生学とは何か、両者の違いを解説

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「衛生」の「生」は生命や生活であり、「衛」はそれを保護し守っていくという意味です。
衛生は中国の古典からもってきたことばになります。
ギリシア神話にでてくる健康の女神ハイジーアに由来する西洋のハイジーンの訳語として明治の初めに使われ現在にいたっています。

日本では伝統的に使用されてきたことばに「養生」があります。
これは、生命や生活を大切にして、健康の増進につとめることです。
1703年に刊行されました、貝原益軒の「養生訓」には、食べ物の注意、心の平静を保つ方法、入浴、喫煙、夫婦生活など、個人がどう暮らせば健康を保つことができるかということがくわしく書かれています。


西洋の「衛生」では、健康の保持増進のための個人の心構えや習慣のほか、上下水道整備などよい生活環境を実現するための社会的対策が重要な部分をなしています。
このため、明治の初めに欧米を観察した長与専斎はハイジーン、ヘルス、衛生行政などに相当することばとして「養生」を採用せず、わざわざ新しく「衛生」ということばを中国の古典から見つけだして使ったのです。
衛生の実践でなされた、衣服・器物・住居の消毒・滅菌、浄水技術、屎尿処理方法などは、産業革命後の都市のスラム街で発生する急性伝染病の流行防止にきわめて有効でした。





衛生に関する知識や技術の体系が衛生学です。
日本は、明治時代にドイツ医学を取り入れたので、19世紀後半にドイツでできあがった衛生学が日本の医学校でも教育・研究されるようになりました。

日本では、第二次大戦までは衛生学のみが、そして戦後の占領政策により米国流の公衆衛生学が医学校に導入され、同時に、衛生行政にも英米流の公衆衛生活動が導入されました。

衛生学と公衆衛生学の違いは、日本ではこのように歴史的なものなのです。
環境をととのえ、傷病を予防し、健康の保持増進をはかるという目的では両者は一致しています。
両者の違いをしいていえば、衛生学はより基礎的であるのに対し、公衆衛生学はより応用的で集団を対象とし、社会・経済・行政的側面をより多く扱うといえます。
健康科学は、医・歯・薬・看護学など広義の健康にかかわる諸科学の総称です。

公衆衛生は1949年WHOのウインスロウC.E.A.Winslowによって、次のように定義されましてた。
「公衆衛生は、共同社会の組織的な努力を通じて、疾病を予防し、寿命を延長し、身体的・精神的健康と能率の増進をはかる科学・技術である」

つづいて、公衆衛生の内容として、環境保健、疾病予防、健康教育、健康管理、衛生行政、医療制度、および社会保障をあげています。

公衆衛生には、個人の衛生も含まれますが、個人の手に負えない事態も多いので、それらに対しては、社会の組織的な努力を通じて問題を解決しようとするものです。

臨床医学の主な対象が個々の患者であるのに対し、公衆衛生の対象は、普通に生活する人々です。

この人々の生活環境をよりよいものにし、病人を早く見つけ早く必要な治療を行って普通の生活に戻し、この人々を一層健康な状態に保とうとします。
この実践は、行政や民間の各種機関団体による公衆衛生活動であり、活動の基礎となる知識や技術の体系が衛生・公衆衛生学です。

公衆衛生活動はその対象によって、母子・成人・老人保健、あるいは、生活の場によって地域・学校・産業保健などとさらにこまかく分類される場合もあります。




posted by アク at 22:00| Comment(0) | 健康の知識
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